IMG_9880 (2) 9月18日(水)千葉の外房に住むKさんから手紙が届いた。「8日の夜から9日にかけて千葉を襲った台風の、それは凄まじかったこと。まんじりともしないで朝を迎えました」と始まる手紙には、生まれて初めて体験したという台風直撃の恐ろしさが記されていた。TVニュースで千葉県内の被害の様子が映し出されるたびに、Kさんのところは如何かと案じていたのだが、手紙によると、幸い家屋に格別の被害はなく、電気もすぐ回復したので生活には困っていない、とのこと。ただし生鮮食料品が手に入らないので、目下は備蓄した乾物類を食べているという。こちらから何か送ろうかと電話をしたところ、「いまクール便は停止中、生ものは扱っていないのよ」とのこと。8年前の大震災の時よりひどかった、自然災害ゆえ諦めるしかないが、実にやりきれないとKさん。午後、Kさん宛てに見舞いの品を送る。
 ●スーザン・サザード『ナガサキ』(みすず書房)を読む。アメリカのノンフィクション作家が12年の歳月をかけて完成させたもの。長崎の被爆者に取材して、彼らの生い立ちから被爆後の人生まで細やかに記録、同時に太平洋戦争の背景、歴史、アメリカや日本の動きなどが詳しく記されている。副題は「核戦争後の人生」。これまで数多の原爆記録や被爆体験記を読んできたが、これほどすっきりと頭に入るものはなかった。アメリカでは原爆がどう位置付けられているのもがよくわかる。ただ原爆を積んだボックスカーが長崎上空を通過するとき、飛行機には緊急着陸のため沖縄アメリカ空軍基地へ帰還し得るぎりぎり分の燃料しか残っていなかった、だから雲の切れ間から長崎が見えた時、迷わず原爆を投下した、というようなことが書かれているくだり(64ページ)に、「当時(1945年8月9日)沖縄にアメリカ空軍基地があったのか?」と無知な読者(私です)は思ってしまいました。これは沖縄島にあったのではなく、沖縄周辺にあったアメリカ空軍基地ということでしょうか。
 著者のスーザン・サザードはこの秋来日し、長崎で講演を行うという。彼女が取材した被爆者の何人かは、既にこの世にない。被爆者をひとつにくくることはできない。一人一人がかけがえのない命で、それぞれの人生を生きているのだ。この本を読むとそのことが切実に迫ってくる。
 写真はカラマツソウ。この7月、八幡平で。