12月30日(土)晴れ。山は雪。朝日新聞社のPR誌「一冊の本」の1月号に、今秋亡くなった阿部謹也の晨子夫人が、「遺書のような」という一文を寄せている。その中に次のような下りがあった。
「夫は人類の未来、地球の現状を憂うる気持を強めていました。”人類の危機がここまで来た原因はキリスト教にある。人間がこの世の主人であり、動植物はその人間に仕えるためにあるというキリスト教のもとで自然科学が進み、西欧文明が栄え、自然破壊、地球の温暖化などの危機が迫ってきている”。西欧文明を批判する夫は、「山川草木悉皆成仏」という仏教の方へ気持を寄せていたようです。しかし最後まで”自分は無宗教だ”と言っていましたので、葬儀は無宗教にしました」。
ヨーロッパ中世史の歴史学者だった阿部謹也が、西欧文明を批判し、最後は仏教に心を寄せて、親鸞の呪術の否定、世間の否定という生き方を高く評価していたということを、初めて知った。仏教や神道は、自然は畏怖すべきものという前提のもとに、人間もその自然の一部で、動植物には仲間という感じを持っている。日本人の中に、一神教よりアニミズム的傾向が強いのは豊かな自然環境のせいでもあるだろう。これからの世界に必要なのは、そういう共生の考え方ではないだろうか。
今日はお正月用品の買出しで、三条通商店街や錦市場へ出かけてきた。花を活け、鏡餅などの飾付もすんで、これから夕食の支度にかかるところ。愛宕山に昨日の雪が白く残っている。つれあいは朝から東大阪の花園まで、高校ラグビーの応援に出かけた。毎年恒例の同窓会のようなもの。
写真は近所の仕出屋の店先で見かけた光景。これは柚でできた「ゆべし」。