8月29日(金)曇り。●野里洋『癒しの島、沖縄の真実』(ソフトバンク新書)によると、沖縄に住む本土出身者には3つのタイプがあるという。「一つは沖縄のすべてが好きという沖縄フリークで全体の1割くらい。二つめは沖縄に馴染めず嫌いという人で、全体の2.3割。三つめはその中間でどちらともいえないという人たち、全体の半分くらい」。これと似た分析に沖縄病というのがあるそうだ。まず大好きになり、移住したら嫌いになり、最後は諦めるというふうに病状が進むものだとか。私も四半世紀ほど前、初めて沖縄へ行ったときに、この病にかかりました。沖縄のすべてが好き、沖縄の自然、食べ物、音楽、やきもの、紅型、歴史、沖縄本、沖縄では方言によるラジオ番組があるのに驚いたものですが、建て替わる前の首里にあった県立博物館に日参し、島の古い城址を巡ったものです。那覇の国際通りの裏には、沖縄独特の巨大な亀甲墓があり、そのせいで、繁華街を一歩入れば深い緑の周りになにやら精霊の気配がしたものです。赤瓦の家、デイゴの並木、真冬というのに町にはブーゲンビリアやハイビスカスの花が咲いて、旅情をそそられました。でも近年、那覇の町は本土並みの景色に変っていって、新しい町からは沖縄色が消えつつあるのが残念。これも振興費のせいでしょうか?
●諸田玲子『王朝小遊記』(文藝春秋 2014年)を読む。いまから1000年前の京を舞台とする痛快活劇。私がいま読んでいる藤原実資の日記『小右記』をもじったな、と思いつつ一気に読了。当時の庶民の生活を記したものは少ないが、歴史上の事件や人物は実名で出てくるので、時代考証はなされているのだろう。失うものは何もないところまで追いつめられた5人の男女が疑似家族となって、魑魅魍魎のごとき悪人と闘うという話だが、彼らにそれを命じるのが、藤原実資とその息子の僧良円。実資の唯一の跡取りである娘千古を守るため、彼女に災いをなす敵を探索し倒すというのが5人の任務なのだが、敵が誰なのか、当時の史実を背景にいろんな貴族たちが登場して実に賑やか。この時代を舞台にした小説は少ないので、まあ面白く読んだが、痛快活劇は誉めすぎか。この人の作品では『奸婦にあらず』(日経新聞社 2006年)が印象に残っています。
写真は近所に咲いている酔芙蓉。昼前はこんな色ですが、夕方には紅色になります。