1月30日(金)雨のち曇り。朝、東京の友人より写真付きのメールあり、「すごい雪です」と。よほど嬉しいのかメールの文字が弾んでみえる。京都は雨。午後にはあがったが、北山は雲に覆われている。今日、1月30日は宮本常一(1907=1981)の命日。柳田國男や渋沢敬三の弟子だが、フィールドワーカーとしては彼にかなう者はいなかった。全国を歩き、地域社会を理解して支援することができたのは、彼が学者というよりも庶民、いや農民という意識を失わなかったからだろう。彼の中には人間や社会に対する知識と知恵が同じ重さで収まっていた。観念先行の研究者とは遥か隔たったところにいたと思う。没後30年になるが、いまも彼に関する書が発行され続けている。毎日新聞社の『宮本常一写真・日記集成』やみずのわ出版の『宮本常一写真図録』などは何度見ても見飽きることがない。故郷周防大島の役場のホームページには、宮本常一データベースが公開されていて、ここでも彼が撮影した古い写真を見ることができる。年中、旅の途上という夫を持った妻はさぞ苦労をしたことだろうが、身内でない読者としては、熊楠同様、一度会いたかった人である。
●佐野眞一『旅する巨人』(文藝春秋)は宮本常一を描いた評伝。この本をはじめ、『遠い「山びこ」』、『大往生の島』、『誰が「本」を殺すのか』など、この人には優れた作品がいくつもあるのに、最近あまり見かけないような・・・。
●宮本常一『民俗学の旅』(講談社学術文庫)を読む。この本の最後近く、「若い人たち・未来」の項に、山口県徳山市(現在は周南市)のマツノ書店のことが出てくる。「親子代々古本屋だが、息子の松村久さんが山口県に関する古書の復刻をはじめた。また、山口県に関係する学術書が彼のおかげでずいぶん日の目を見ることが出来た。地方を研究した書物はその土地で出版されるのがよいのだから・・・」というようなことが書いてある。ずいぶんご無沙汰しているが、松村さんはお元気だろうか。
写真は滋賀県守山の小さな神社にあった勧請縄(結界)。滋賀県内には多く見られます。