11月26日(金)晴れ。午前中、古文書読み。終わったあと、迎えに来たS子の車で大原野へ行く。前日、S子に大原野神社の紅葉の話をしたら、ぜひ見たいというので案内することになったのだ。大原野は京都市西京区、小塩山の麓近くに広がる田園地帯で、ここに藤原氏ゆかりの大原野神社がある。784年の長岡京遷都の際、藤原氏の氏神である奈良春日神社の分霊を勧請したもので、平安遷都のあと、藤原冬嗣が社殿を造営して大原野神社と名付けた。藤原氏の勢力が盛んだったころは多くの信仰を集め、皇族・貴族たちの参詣や奉幣が相次いだという。藤原道長(『御堂関白記』)や実資の日記(『小右記』)にもたびたび出てくる二十二社の一つ。いまは静かな里の社という感じだが、境内には清和天皇産湯の清水という瀬和井があり、本殿前には狛犬ならぬ狛鹿があって、ゆかしい歴史を感じさせる。奈良の猿沢の池を模して造られたという鯉沢の池の畔にある茶屋でお団子つきのコーヒーをいただく。境内には結構な人出あり、驚いたことにその中に白無垢姿の花嫁が三人もいて、撮影スポットでは三組のカップルが代わる代わるカメラに収まっていた。この日ここで神前結婚式を挙げたものやら、それとも前撮りというものなのか。そのうち社殿裏からぞろぞろとハイカーたちが現われて驚いたが、どうやら小塩山から下りてきた人たちらしい。大原野神社のすぐ上には西行桜で有名な花の寺勝持寺があり、さらにそこから登っていくと、「秋夜長物語」に出てくる金蔵寺がある。小塩山の山頂には、墓などつくらず遺灰はこの山に撒くようにと遺言して亡くなった淳和天皇(786~840)の御陵がある。この帝はいわば散骨・散灰の嚆矢となる方といえるのではないか、京都市内から遥かに西山を遠望してはいつか自分も海に・・・と願っているのですが。
写真上は大原野神社。下は狛犬ならぬ狛鹿。