IMG_3340 3月3日(水)晴れ。前日の雨が上がって気持ちのいい朝になる。ベランダから嵐山方面を眺めているうちに出かけたくなった。久しぶりに嵐電に乗る。車内には旅行者らしき若者たちの姿がちらほら。嵐山の手前にある車折神社前で降り、ここの花はいかならむと見に行く。富岡鉄斎はかつてここの宮司だった。最近は境内にある芸能神社が有名なようだが、私には鳥居前の寒緋桜が親しい。この日、寒緋桜はまだ5分咲きというところ、しだれ梅や早咲きの桜が見ごろだった。沖縄に多い寒緋桜が京都でも見られるのは嬉しいこと。大鳥居が無くなっIMG_3355たのは寂しいが(台風で倒れたのか?)この桜が健在でよかった。
 嵐山は人通り少なく、閉店中の店も少なくない。改装工事を行っている店がいくつかあった。かつては通りを埋めるほどの人で、地元の人間は足が向かないと言われたものだが、こう閑散としていると寂しすぎて気が沈みそうになる。というわけでどこへも寄らず、嵐電に乗って昼前には帰宅。
 ●八木正自『古典籍の世界を旅する』(平凡社新書)を読む。著者はこの道50年の古書店主で、体験をもとに明治以前IMG_20210301_102718の書物である古典籍の魅力について語っている。著者によると、古代の写本が豊富に伝わる国は日本以外にないという。そこから国宝級のお宝を発見する喜びがいかなるものか、生き生きと記されている。古書業界の重鎮・反町茂雄に師事し、その薫陶を受けたことなど、貴重な思い出も綴られている。新発見の長崎版画オランダ船図のことや、ロンドンにあった川原慶賀の長崎出島図のことなど、そうだったのかと思いながら読んだ。コレクターに頼まれて、坂本龍馬の書状を鑑定の上、1633万円で落札した話も面白い。奈良・平安時代の古典籍は殆どが筆写本が伝わるのみ、「源氏物語」も「枕草子」も原本は現存しないのだ。紫式部の筆の跡が出てきたら断簡でも龍馬の手紙どころではないかもしれませんね。
 写真上は車折神社のしだれ梅。中は嵐山の渡月橋。ほとんど人影なし。寂しいものでした。